じにつくす’s blog

単にいろいろ書きます。

「ポジショナルプレーのすべて」にイチャモンをつける

サッカーオタクに話題の「ポシショナルプレーのすべて」を読みました。

単純にレビューにしようかと思いましたが、ほとんどイチャモンをつけるだけなのでタイトル詐欺にならないようこうしました。

以下イチャモンになります。

 

 

この本を読み終えた時、とてつもない衝撃を受けるのではないだろうか。僕は受けた…

この本は"ポジショナルプレー"についてほとんど書かれていないのである。

なんてこった。ポジショナルプレーのすべて、というタイトルなのに。

参考文献の引用部分、監督インタビューの項はポジショナルプレーのことが記述されているのだが、それ以外には全くない。

「戦術オタクがポジショナルプレーについて一体何を語るんだろう?よっしゃイチャモンつけたるで!!!」という思いで僕はこの本を手に取ったのだが、本当に書いてないので肩透かしを食らった気分だ。

 

この本のほとんどが近年の欧州サッカーの戦術(多くはマンチェスター・シティ)に関すること、その"事例と解説"がなされているだけである。

紹介されている事例がポジショナルプレーと呼ばれているというだけで、なぜそれを"ポジショナルプレー"と呼ぶのかは、肝心なところが全くわからない。

本のタイトルが「ポジショナルプレーのすべて」なのだから"ポジショナルプレー"が主語であるべきだと思うのだが、実際には"ポジショナルプレー(を活用している欧州サッカークラブの戦術)"が主語なのだ。

つまりこの本は普通の欧州サッカーの戦術解説本だ。そういう観点で読めば面白いのだが……

 

 

 

著者はポジショナルプレーをサッカーにおけるコンパスと例えている。ポジショナルプレーはチームの指針になるコンパスであり、選手の意思決定を助けると。

コンパスが方角を示す原理は誰もが知っている。地球全体が大きな磁石になっているから。言い換えれば地球全体が大きな磁石になっていることからコンパスは方角を示すことができる。

ではなぜポジショナルプレーは"コンパス"になるのだろうか。なぜポジショナルプレーはチームの指針になるのだろうか。"地球の磁場"に相当するものは何なのか。それがわからないから非常にモヤっとする。

この本がポジショナルプレーの教科書だとして、「先生!何でコンパスを使うと方角がわかるの?」と聞かれても「それはコンパスだからだよ」と答えるしかない。

 

この本には多数の戦術が紹介されているが、なぜそれをポジショナルプレーによるものと解釈するのかが不明である。

"日本でもポジショナルプレーの流行は見逃せない。日本人監督も片野坂監督、渡邉監督、風間監督がポジショナルプレーの要素を含むスタイルを標榜する"(略したけど許してね)とあるのだが、なぜなのかはわからない。

この本を読む限り、少なくとも風間監督がポジショナルプレーを標榜しているとは思えないからだ。

ファンマ・リージョの言葉の引用で「ポジショナルプレーの基本的な思想は、狭いスペースでパスを回すことで大外の選手をフリーにすることにある」とあるが、風間サッカーの思想とは異なる。

現にグランパスでは異常に選手が密集し"大外の選手"なるものが現れることがないからだ。

またポジショナルプレーにおいて5レーン理論は価値のあるもの、とあるがグランパスでは5レーン理論など存在していない。

やはり選手が密集し大外が存在しない、またダブルボランチが並列になるなどバランスが悪く5レーン理論の原則からもズレがある。

では、著者は何をもって風間監督はポジショナルプレーを標榜していると判断したのだろう。

(風間監督はポジショナルプレーを標榜していないと言いたいわけではない、あくまでこの本の内容から判断すれば"違うんじゃないのか"という解釈になるのでは?と)

 

 

最大の疑問はP22の、"なぜ「ポジショナルプレー」は異なるフットボール文化圏で受け入れられているのだろうか?"、の部分である。

スペインだけでなくイタリアでもポジショナルプレーが受容されていることからの"なぜ"。

しかしその答えが書いていない。

次の項で"ポジショナルプレーとは枠組みでありコンパスである"と続くのだがそれが"なぜ"に対する答えなのだろうか。

何で答えになるの?

 

 

 

以上がイチャモンになります。

 

個人的にはポジショナルプレーについては「何なのかはよくわからないが相手のプレッシャーラインの背後に何らかの優位性を見出だすための概念」と考えています。

そのためにやることがポジショナルプレーでそれを繰り返す、またはピッチ全体に適応をする"あんな感じ"になるんじゃないかと。

正しいかどうかはわからないけどこう考えると、一般的に"ポジショナルプレー"と呼ばれているチームとそうでないチームの区別と一致する、気がしてる。

 

そう考えると風間監督のやりたいことはほんの一部ポジショナルプレーなのかもしれないですね。ハズスウケールでやりたいこと。まあピッチ上でポジショナルプレーだ!と思うことはないのだが。

 

スペインとイタリアという異なる文化圏で受容されている理由については、僕はそもそも「異なる文化圏」と思っていません。

「スペースについてどう考えようか」という思想において共通点を感じるのでスペインとイタリアは似ていると考えています。

逆にドイツでペップ的なサッカーがそれほど生まれてこないことは「異なる文化圏」だから、だと思います。

 

 

あ、ベガルタ仙台の渡邉監督へのインタビューはとても興味深いと思いました。ポジショナルプレーを主語にしている部分はあそこだけだけど。