じにつくす’s blog

単にいろいろ書きます。

「君はひとりじゃない」

スティーヴン・ジェラード自伝
君はひとりじゃない
(東邦出版)


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本屋で見つけて何となく手に取る僕。
「君はひとりじゃない」ってタイトルに笑う。なぜ訳したし!

まずとてもボリュームがあります。デカいし長い。500ページくらい。

プロローグでは1314シーズンの第36節チェルシー戦のスリップ事件が語られていました。
どうやら1314シーズンから昔話を入れつつ振り返るようだったので、面白そうだと思い購入しました。

まあ別にリヴァプールのファンではないし思い入れもないのですが…
マンUファンでもないので特に抵抗はありませんでした)
でもジェラードは好きな選手の1人です。
というかCMFのトップ選手だいたいみんな好きです。


内容はやはり1314シーズンの最初、スアレスの残留説得の話から始まります。
そして1415シーズン、リヴァプールを去るところまで語られていました。


そのあたりの僕の1314と1415シーズンのリヴァプールの感想と妄想と一緒にこの本を紹介していきます。
(とにかく僕はリヴァプールファンじゃないのであしからず!)


スアレスは1314シーズン、アーセナルに移籍しようとしていました。噛みつき事件もあり移籍したいと。
でもジェラードは自分やトーレスの話を交えながら説得し、成功します。
スアレスの最終ゴール地点はあくまでバルセロナです。
(僕はアーセナルファンでもありません)
もしアーセナルに行っていたら、今ほどの選手にはならなかったと思います。怪我もしてそう…
今季のスアレスは間違いなく次のバロンドール第一候補だ、と思っています。
技術もメンタルもナンバーワン。

1314シーズン、マンチェスターの2チームとチェルシーは監督交代が起こりました。
特にマンUの凋落がリヴァプールにとって大きかったと思います。
ジェラードは昨シーズンからのチームを引き継げる今のリヴァプールが上位にいく絶好のチャンスととらえていました。
そしてリヴァプールは優勝争いに加わることになります。

スタリッジが“奇跡的”にコンディションを維持し、スアレスとのコンビは「SAS」と呼ばれるようになりました。
コウチーニョスターリングもスアレスに引き上げられるようにトップクラスの選手へと成長していきます。

しかし僕は前半戦、リヴァプールアーセナル、シティ、チェルシー全てに負けていたのでどうせ失速するだろうと思っていました。
(この時点ではモイテッドはすでに脱落でしたね(笑))

後半戦、ジェラードはアンカーの位置をプレイすることになりました。
このあたりの経緯などなど、結構詳しく書いてあるのでとても面白いです。
またファーガソンに過大評価だと言われた話もここで交えて語られています。

これも上手くハマり後半戦もSASの得点力は衰えず、アーセナル、ユナイテッドを粉砕しました。
とにかく年明け以降勢いがある、これは優勝候補か??ってなりますよね。

ジェラードのアンカー起用は面白い試みだったと思います。パスセンスとフィジカルの強さはありこれは上手くいっているようでしたね。
ただ視野だとかコーチングには少し疑問があるかなぁってのが僕の評価です。このシーズン世界最高のアンカーはシャビ・アロンソでしょう。
ジェラードがあげた一緒にプレーした中で最高の4人のプレーヤーのうちの1人、アロンソは首振り、ボールタッチからやっぱりスペイン!って感じでとにかく上手い。
ジェラードとは比較になりません。加えて最終ラインの前での統率能力が素晴らしいです。常に声を出して指を指して周りに指示を出していました。
結果的に本職ではなかったため、アロンソの劣化だったような気がして、僕はジェラードのアンカーを見るのはあまり好きではなかったです…

4月くらいまでリヴァプールは確か11連勝くらいします。
シティをアンフィールドで退けたことでリヴァプールがトップになりました。
サンダーランドチェルシーとシティの勝ち点を削ったのってこの後だっけ前だっけ……)

「This is gone! We go to Norwich! Exactly the same! come on!!」

このやりとりをスカイスポーツに撮られていることに気づかなかったそうです。あとあと考えればもっと落ち着くべきだったと言っています。
(今でもまだ笑われていますね)
このあたりの描写には思わず読んでいて熱くなってしまいました。ジェラードが普段何を考えているのかとか…

ノリッジには3対2で勝利しました。
このとき確かスカイスポーツの解説をしていたジェラードの友、ジェイミー・キャラガーがこう言っていました。
「このまま優勝したら前例のないことになるな、こんなに失点しているのに」

僕もそう思っていました。もう少しはっきり言えば優勝に相応しくないと思っていました。4月になるまで守備が構築できていないなんて!!!
3対2で勝てるなんて運が良かっただけ。それにとにかくミスによる失点が多い。
本当に運のいい奴らだなぁってずっと思っていました。
(……目にもの見せてやれ、試合を殺しスローダウンさせろ、あとは勝手にどっかでミスしてくれる……)
僕はそんなふうに考えていました。

ジェラードはものすごくモウリーニョを尊敬していたようで、そのことでチェルシーに行きかけたそうです。
この本のいたるところにジョゼ・モウリーニョと仕事がしたかった、と書かれています。リヴァプールでも代表でも…


そしてチェルシー戦、冒頭に書かれているあの「スリップ事件」が起きます。


そのときのジェラードの本当の気持ちが素直に書かれています。

その後クリスタルパレス相手に得失点差を埋めるため過剰に攻めたことによって終盤に同点にされ引き分けになりました。
そこでキャラガーが「やはりこのチームは優勝に値しない」と言っていました。

何とも劇的な幕切れ、リヴァプールの象徴、ジェラードのスリップによって優勝を逃す悲劇的な結末でした。


しかし結局のところもしあのスリップがなかったら優勝できたか?チェルシーに勝てたか?
それは「できなかった」と断言します。
あの第二次モウリーニョチェルシーはトップ7のチームに負けたのは1415シーズンを含めてアウェーのエヴァートン戦のみです。
例え大幅なターンオーバーを敷いたとしても負けることは許さなかったかと。
まあ結果的に0ー0の引き分けでも良かったかもしれませんが、あの時のリヴァプールにそれは無理でしょう。
(逆にチェルシーは得点力不足、きちんとホームでサンダーランドノリッジに勝てていれば…)

まあ多分みんなそれを知っていますが、やはりジェラードのミスということで画になっちゃうのがトッププレイヤーの悲しいところ。
1314シーズンのリヴァプールはどうせジェラードがミスらなくても他の選手がミスってたよねきっと、と言われるような守備が悪いチームでした。
ただミニョレがミスってもあんなふうにチャントを歌われたりはしないでしょうし、ジェラードはちょっと可哀想。

でもあのジェラードアンカーが本職のシャビアロンソだったら…きっと守備も統率できたんじゃないかなぁと思ってしまいます。


1516シーズン、レスターが旋風を巻き起こしています。もう優勝はすぐそこ。
1314シーズンと違ってもちろんライバルチームが大コケしてることもありますが、優勝に値するのは間違いないと思います。
その理由はやはり守備です。レスターは前半戦こそ撃ち合いをしていましたが、後半戦はめちゃくちゃ固い!
守備の連携も良く、試合運びもとても上手い。
「優勝するチームは攻守のバランスが良い」という法則に当てはまります。



この自伝は後半に突入します。

ブラジルワールドカップ、そして自身のイングランド代表のことについて語られています。

メンタルが弱かった、チームの不和、それからキャプテンの難しさなどなど。
ただ以前と比べてブラジルワールドカップの雰囲気は良かったそうです。ホジソンも良い監督だと。リヴァプールを率いていたときも。

ジェラードは監督のことを本当にリスペクトしているのがわかります。
ウリエ、ベニテスダルグリッシュカペッロ、ロジャース。
ベニテスは冷酷で今では連絡を取り合っていないそうですが、やはり尊敬はしているそうです。
氷のベニテスと炎のジェラードでタイトルがとれる!そう感じていたみたい。

イングランド代表はワールドカップでは散々な結果となりました。それも最速の敗退国。
結果だけ見れば正直最弱のアジア勢と変わりません。
印象的だったのはジェラードはきちんと理解していた点でした。
イングランドは強くない。むしろ2006や2002でベスト8に行けたことはすごいことだった。」
「にもかかわらずメディアは過剰な期待をかける。何も成し遂げていない若手を持ち上げる。」

今でもそうですね、バークリーなんかもまだ何もしてないのに持ち上げられている。
ドイツやスペインはどうか。

日本にもある程度通じる部分がありますね。変に若い選手を持ち上げたり。
ただ歴史が浅いのでまだまだ仕方ない。これから日本は成長していくと思います。

でもイングランドはどうでしょうね…歴史だけは無駄にあるので変わらないかもしれない…。

正直なところイングランドは間違いなくテクニックだけでなく戦術においてもかなり遅れています。
ワールドカップイタリア戦ではピルロを完全にフリーにさせました。そんな国は他にまずいない。
スコアは僅差ですが内容はボロ負けと言っても良かったと思います。
(イタリアはイタリアで前線のクオリティ不足は深刻……)
遠藤をフリーにしていたアジア弱小国レベルの本当にお粗末な戦術。
ジェラードは少し気づいていたそうです、スターリングの戦術理解度ではピルロを抑えられるか不安だと。

その後最終ラインの連携不足によりジェラードからスアレスというリヴァプールラインによってウルグアイに敗北。
グループ最強の完成度だったコスタリカに消化試合で勝つこともできず帰国する事になります。

ジェラードは「イングランドは戦術で劣っている。442はもう時代遅れだ、これでスペインと戦ったら人生最も長い90分を耐えることになる」と冷静に語っています。

モウリーニョイングランド代表を率いたら一度は決勝戦に行けたのではないかと。
(いやいや決勝には程遠いだろと思いましたが……)
モウリーニョはジェラードランパードマケレレの中盤に憧れていた、と言っていました。
10番を置かないで自由に飛び出すスペースを作り、後方に1人配置して飛び出すリスクを減らす。
そうすればジェラードとランパードは共存できたんじゃないかなと。
ジェラードがチェルシーに移籍していたらイングランド代表ももう少し強かったかもしれない。
まあ442だったらどこで使おうとこの二人の共存は無理でしょう……って普通わかると思うけど……

(ただ442はさらに進化をとげてメジャーな戦術になろうとしていますね、アトレティコに代表されるように。)

このワールドカップでジェラードは代表を引退しますが、その理由はリヴァプールでの出場時間を減らしたくないから、と語っています。


そしてオフシーズンの話へ移ります。
スアレスが噛みつき移籍していく話。
アレクシスサンチェスの話、なぜバロテッリだったのかという話などなど。

サンチェスはロンドンがいい、ということで最終的にアーセナルを選びました。
本当のところはどうかわかりませんが、リヴァプールにはつらいですね。「都会がいい」という理由は。


リヴァプールは1415シーズン、スタリッジは負傷し、まあ予想通り失速します。
個人的には思ったより失速しなかったとも言えるかもしれない。

ジェラードはロジャースに今後は出場時間を制限していくと言われていたそうです。
しかしビッグマッチではファーストチョイスだ、そこでフレッシュな状態で出場する為の出場制限だ、と。
それでもジェラードはまだまだリヴァプールでやっていく気満々だったそうです。34歳でそれはある程度仕方のないことだと。
しかしなかなか契約延長の話がこないことに不安を感じていたとか…。

そして秋頃に提示された契約が「インセンティブを含む契約」だったことにヒドく失望します。
これから出場回数が制限されていくのに?と。


僕にとって1415シーズンのリヴァプールで最も印象に残っているのは、チャンピオンズリーググループステージ、レアルマドリーリヴァプール戦です。
試合は見ていません。まあ普通にレアルマドリーが勝ちました。

この試合、リヴァプールは週末のチェルシー戦を見据えて控えメンバーで臨みました。そしてジェラードもベンチです。
つまりレアルマドリーとの試合を捨ててリーグ戦、というかCL圏内をとることを優先したわけです。

「CLに出たいからCLのビッグマッチを捨てる?だっせぇ奴らだな。」
僕はそう思いました。誰もがそう感じたのでは?
そしてその週末でチェルシーにも負けました。(ますますだっせぇな)


レアルマドリー戦でベンチだったことにジェラードはやはり不満を感じていたようです。

その後、ジェラードはストーク戦でもベンチに座ることになりました。まだCLが残っていたので今度はリーグ戦で温存です。
やっぱり不満を持つジェラード。
でもこちらは理解できます。34歳をフル稼働させるべきではないよね。

結局のところ、ベンチに座るのがイヤ、というのがリヴァプールを去る一番の理由だったんだと思います。
いやたった数試合じゃないか、って気がしますが10年以上レギュラーで試合に出た身には耐えられなかった。

CLグループステージ最終節、バーゼル戦。
誰もが期待した10年前のオリンピアコス戦のスーパーゴールは生まれることなく敗退します。
捨てゲームをしてリーグ戦もCLもお終いって(笑))

ちなみにヨーロッパリーグではイスタンブールであっさり姿を消しました。


ジェラードは春まで怪我で離脱します。
チームは調子をあげ、ライバルチームの不調もあり、十分2位が狙えるところまできました。
「勝ってるチームは弄るな」の法則でジェラードは復帰してもすぐにはスタメンに戻りません。
いやでもそれは理解のできること、でもでもナショナルダービーは別だろ!それには僕も同意します。
ナショナルダービーではリヴァプールは低調で結局後半頭からジェラードが出場することになりました。

そしてジェラード最後のナショナルダービーはハイライト番組でもノーカットで放送されることに。
(でもこっちはスリップと違い同情しません(笑))

とにかくフラストレーションが溜まっていたそうです。
まあほめるならジェラードはやっぱり熱い男!とにかく若い奴らは腑抜けが多すぎる!プレミアリーグならタックルは大事!
ってことですね。やっぱりリヴァプールの人間ならマンU戦では魂を入れないと。


これでCL権争いもお終い、ついでにその後FAカップも終わりました。

ジェラードのラストはまあ悲惨でした。ストークに大敗。ワオ。
クラウチヘディングおめでとう!



お別れ会の話があって、この自伝は終わります。

その他、間には様々な昔話がありました。
イスタンブールの奇跡、やんちゃした話、怪我の話、ペニスを負傷する話、ウリエやベニテスの話などなど。
そしてヒルズボロの悲劇についても。

とても内容盛りだくさん、それでいてメインは最近の2シーズンの話なのでニワカの僕でもとても面白かったです。
リヴァプール、ジェラードのサポーターなら絶対に読むべきです!!!
ただ「君はひとりじゃない」ってタイトルにしちゃうくらいなので、もしかしたら訳が悪いかも?


ジェラードという男は、イスタンブールで、というかあのシーズンのチャンピオンズリーグで全ての運を使い果たしたんだと思います……
考えてみたら2010年以降、全く良いことがない…。

1415シーズンでジェラード、そしてランパードプレミアリーグから去りました。
ランパードについては全く語られていなかったので、よっぽど比較が嫌だったんだと思いますね…)
今ではジェラード、それとランパードのような選手はなかなかいません。ドカーン!みたいなのが無くなってしまって寂しいです。

ジェラードのプレイ集は今でもたまに見ます。
とにかく豪快なプレー。レーザーキャノンとロケットパスは見ていて爽快!

ジェラードは今後指導者を目指すそうです。
リヴァプールの監督をしているところが見れるといいですね!
(いやぁでもイングランド人だし全然期待できないなぁ………)
でもでもスティーヴン・ジェラード第二章の始まりです、頑張って下さい!

You'll never walk alone.